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警察に捕まったら…

今日は、当番弁護士の待機日でした。当番弁護士というのは、刑事事件の被疑者(容疑者)・被告人として逮捕または勾留され身柄を拘束されたときに、1回だけ無料で弁護士と接見(面会)できるという、弁護士会の事業です。毎日、数名の当番を割り振り、当番弁護士の出動要請があると、被疑者・被告人のいるところに赴くのです。

さて、身内が犯罪者として逮捕されてしまったら、どうしたらよいでしょう。弁護士の知り合いがいたら、その人に依頼するか、紹介してもらうかすることができますが、そうでない場合には、この当番弁護士制度を活用するのがいいでしょう。今では、一定の場合には被疑者国選弁護人という制度もあります。(*1)
特に逮捕されてから起訴されるまで、被疑者(容疑者)の立場にあるときは、一日一日の使い方が大切になってきます。

逮捕後の手続の概略は次のようになります。(厳密に言うともっと複雑ですが、典型的な場合を想定しています。)
警察官が逮捕すると、被疑者は所持品検査・写真撮影等を済ませ、警察署の留置場に入れられます。警察官は、被疑者の弁解(言い分)を聴き取った上、48時間以内に検察官に被疑者の身柄を送るか(検察官送致、「身柄送検」といわれるアレです。)、さもなければ釈放することになります。
検察官が被疑者の身柄を受け取ったら、被疑者の弁解(言い分)を聴き取った上、24時間以内に勾留請求をするか釈放するか決めることになります。勾留というのは、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるなどの場合に、さらに10日間被疑者の身柄を拘束することです。検察官が勾留請求をすると、被疑者は裁判所に連れて行かれ、裁判官の勾留質問を受けます。ここで裁判所が検察官の勾留請求を認めると、勾留状を出すことになります。この勾留は、報道では「拘置」などといわれますが、これは誤用です。
10日間の勾留期間を経ると、検察官は、起訴・不起訴の判断をするか、さらに最大10日間の勾留延長を請求するかしなければなりません。起訴しなければ釈放です。

こうして、逮捕されると、起訴・不起訴の前に最大23日間身柄が拘束されることになります。この間、警察・検察は証拠を集め、関係者から事情を聞き取り、被疑者を取り調べることになります。被疑者となった日とは、警察・検察の取調べを受けるわけですので、どのように対応したらよいか、外部とのやりとり、は基本的に弁護士が窓口にならざるを得ません。勾留の際に接見禁止決定がついていなければ家族や友人も面会することができますが(ただし留置官の立会いがあり、多くの場合時間制限がある。)、接見禁止決定がついていると弁護士しか面会できません。被疑者は外界から遮断され孤立することになるので、どんな些細な伝言や頼み事でも、とても切実な要求になります。

えん罪だという場合はたくさんのことをしなければなりません。僕は、被疑者には黙秘権があること、納得のできない調書には決して署名・指印してはいけないこと、取調官は自白させようとあの手この手を使ってくるけれども決して屈してはいけないこと、こんなことを教示します。勾留や勾留延長に理由がないと思えば準抗告という不服申立手段があります。納得のできない勾留であれば、その理由を裁判所に説明させる、勾留理由開示公判の申立てもできます。
そして、何より、無実の証拠を収集しなければなりません。現場に赴いて真相を確認したり、関係者から事情をいたり、被疑者の行動経路を洗い直してアリバイ証拠を集めたりです。不起訴を勝ちとるため、これらの成果を検察官にぶつけることもありますが、後の公判を見据えて、検察官の証拠収集活動を増強させないためにあえて開示しないこともあります。その辺の微妙な判断は、ケース・バイ・ケースです。
そうしながらも、できるだけ被疑者に面会して励まし続けることも重要です。そのため、場合によっては数名の弁護士で弁護団を組んで交代で接見し、その内容を報告しあうこともあります。

事実関係を争うのでなくても、早期に損害賠償をして示談を成立させるなどして不起訴を勝ちとることも重要な弁護活動です。起訴されなければ前科者にならずに済みますし、身柄拘束の継続という大きな損害を回避することもできます。

そうしても残念ながら起訴されてしまったときは、公判活動に入ります。そのときに保釈があります。100~200万円ないしそれ以上の保釈保証金を積んでともかくも身柄を解放する手続です。日本法では何故か起訴後の保釈しか認められておらず、起訴前の保釈制度がありません。また、事実関係を争っている場合、保釈を認めてもらうことはなかなか困難です。(*2)

はっきりいって、弁護士の業務の大半は民事事件ですので、刑事事件に不慣れな弁護士も少なくありません。また、弁護活動の内容を見ても、意欲と力量によって出てくる差は、民事事件のそれよりも遙かに大きいです。一生に関わる問題、しかも国家権力や被疑者とされたことによる社会的圧力に立ち向かう問題ですので、自身や身内、知り合いが警察に捕まったら、この辺の意欲と力量を備えた弁護士かどうかをよく見極めることが重要です。

*1 なお、現在、国選弁護人は被疑者段階でも被告人段階でも日本司法支援センターと契約している弁護士しか選任されません。日本支援センターは法務省所管の独立行政法人であり、検察庁も法務省内の一機関であることから、利益相反を回避するため、僕は日本支援センターとは契約を結んでいません。ですから、僕が国選弁護人として選任されません。でも、刑事弁護に携わることこそは弁護士の弁護士たる所以だと考えていますので、どうしても十分な費用を用意することのできない方には国選弁護人の報酬と同程度ないしそれ以下の低廉な費用で受任するようにしています。ただし、交通費やコピー代・連絡費用などの実費は負担していただきますが。
*2 このことが、「人質司法」と言われたり、「出たければ認めろ」という捜査官の利益誘導を招くことなどの原因になっています。

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