« 2008年7月 | トップページ | 2008年12月 »

2008年11月

裁判員制度を考える位相・試論

今、僕たち弁護士の中では、裁判員制度の評価をめぐって喧喧諤諤の議論が続いています。
弁護士会は、長い間、世間の風に当たっていない官僚裁判官による裁判では市民の常識が反映されないとして、市民参加、とりわけ陪審裁判を求めていました。裁判員裁判を推進すべきだと考える層は、裁判員裁判こそ市民参加の突破口であるとして、市民の常識を裁判に反映させるものとして発展させようと主張しています。
他方、裁判員制度に反対する層は、調書裁判とか人質司法とか言われる現在の刑事裁判の実態は温存され、公判前整理によって被告人や弁護人の防御の機会は制限され、評議には官僚裁判官が同席するなど、えん罪が増えると思われる上に、裁判員には重い負担をさせる(刑罰つきの守秘義務や量刑判断までさせる)ものだとしています。
気をつけなければならないのは、弁護士の中での裁判員制度推進派も、裁判員制度にも問題点があることは概ね了解していることです。そのことは前提として、なお実施して問題点は改善していけばいいと考えるか、そうではないと考えるかです。
僕自身は、延期論です。今年の8月に日弁連会長が延期すべきでないする声明を出したことについて、法律家団体の機関紙である自由法曹団通信に批判文を載せたことがあります。→自由法曹団通信1284号
僕自身、現在の刑事裁判には絶望しながらも歯を食いしばって刑事弁護に取り組む者の一人であり、市民参加の一形態としての裁判員制度に真っ向から反対する心境にはなかなかなりきれません。ただ、これはあくまでも心情的なもので、理論的には裁判員制度をいいものだと評価することは極めて困難だと考えています。少なくとも、09年5月に実施されようとする裁判員制度は。
このように、僕は推進派の言おうとしていることもよく分かります。刑事弁護に真剣に取り組む人ほど、そう考えることは理解できるのです。でも、そこに陥穽があります。「見て聞いて分かる裁判」の名の下に、調書などは簡略化され、長期間の身体拘束で行われていることがますますブラック・ボックス化してしまいます。取調の可視化(録画・録音)が施行されていますが、今、法務省がやっているのは一部だけであって、意味がありません。

続きを読む "裁判員制度を考える位相・試論"

|

派遣労働法は廃止!せめて超縮小!

今年は本当に忙しく、更新もままなりません。と言っている間に今年も11月になってしまいました。

貧困問題、ワーキング・プア、ここ数年、よく目にするようになりました。僕たちが属する弁護士会でも、昨年、釧路で開かれた、日本弁護士連合会(日弁連)の人権大会で、格差社会問題が採り上げられ、貧困問題の解決に弁護士会をあげて取り組む決議があげられました。そして、今年、富山で開かれた人権大会では、ワーキング・プアの問題が採り上げられ、労働者派遣法についての具体的な立法提言もされました。

今日、久しぶりに載せる記事では、私なりの労働者派遣法の改正案を考えてみたいとも思います。
ズバリ、私は「改正」では生ぬるく、労働者派遣法は廃止すべきだと考えています。自分が責任を持つわけでもない人を派遣して手数料をとる派遣業というのは、要するに、人身売買ではないでしょうか。人間はひとりひとり人格をもち、その人格は尊重されなければならず、誰にも支配されてはならないのです。
ただし、労働者は、生活のために時間を切り売りし、自分の必要性や能力に応じた労務を提供し、その代償として賃金を得ます。それでも、使用者は、労働者の安全衛生には責任をもち、セクハラ・パワハラ・思想差別と言った人格否定は許されないなどの制約を受けます。そのような責任の所在を明らかにし、労働者の地位を不安定にしたり中間搾取によって労務提供の対価である賃金を減らされたりしないように、戦後、長い間、職業安定法により、職業紹介は公的機関(職業紹介所、ハローワーク)でやらなければならないとされてきました。
その例外を設けたのが労働者派遣法です(1985年制定)。
たしかに、技術を身につけた人たちが適材適所で働けないというのは、本人にとっても社会にとっても良くありません。また、そういう人たちであれば労働条件についてそれなりに交渉することができると考えられてもいいでしょう。そういうことを念頭に、労働法学で「労働市場」という言葉が使われ始めたのもこの頃です。
しかし、「小さく産んで大きく育てる」とは、このことでした。対象業務が徐々に拡大され、26業種までいきました。そして、1999年には港湾、運送、警備、医療、製造以外ならいいとされてしまいました。さらには、2003年には製造過程でも派遣労働が許されることになってしまいました。

続きを読む "派遣労働法は廃止!せめて超縮小!"

|

« 2008年7月 | トップページ | 2008年12月 »